高額療養費制度の自己負担限度額が見直されます。
見直しの1段階目として、25年8月から所得区分ごとに2.7~15%
その後、所得区分を細分化し、26年8月と27年8月にも段階的に引き上げられる予定です。
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がんと向き合うFP 辻本由香です。
乳がんになった経験をもとに、
「がんとお金」「がんと仕事」の講演や個別相談を行っています。
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私自身2度がんを経験しているので、治療費が家計に与える影響の大きさを痛感しています。
民間の保険に加入していたので、ある程度はカバーできましたが、それでも不安は尽きませんでした。
また、がん経験者は何年たっても再発や転移の不安があり、
楽しみに使うお金までセーブしてしまいがちです。
治療費の負担が生活の質を低下させる一因にもなっています。
特にグリベックなど高価な薬剤を使用している白血病の患者さんやGIST患者さんから、
悲鳴のような切実な声が届いています。
【今回の改定で患者さんやご家族から寄せられた声】
・加入している保険からは入院と手術代しか出ない。
これ以上治療費が高くなると子どもの教育費が捻出できない。
・今でも治療費の負担で生活費がキチキチです。もう借金するしかないでしょうか。
・仕事を辞めたことを後悔している。
・治療費が原因で夫や義母とケンカになった。離婚すれば生活保護を受けられますか?
など、医療制度に支えられているとはいえ、
生活を大きく変えざるを得ない状況に追い込まれる現実もあります。
「誰ひとり取り残さないがん対策」
患者の声が届いているのか、疑問が残ります。
この国は、いったいどこに向かっているんでしょうね・・・
☆現在の高額療養費制度 (69歳以下の方)
適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) |
住民税非課税 |
35,400円 |
~年収約370万円 |
57,600円 |
年収約370~約770万円 |
80,100円程度 |
年収約770~約1,160万円 | 167,400円程度 |
年収約1,160万円~ | 252,600円程度 |
☆2025年8月からの予定(69歳以下の方)
適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) |
住民税非課税 | 36,300円 ( 900円↑) |
~年収約370万円 | 60,600円 ( 3,000円↑) |
年収約370~約770万円 | 88,200円程度(約 8,000円↑) |
年収約770~約1,160万円 | 188,400円程度(約20,000円↑) |
年収約1,160万円~ | 290,400円程度(約40,000円↑) |
年収の区分をさらに細かくしたうえで
2026年と2027年の2段階で上限額を引き上げる予定です。
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物価があがってるのに、医療費の負担も増える。
治療に専念できる環境をつくりたいのに、それすら難しくなってきました。
はらたつー!!
言いたいことは山ほどありますが、治療も暮らしも待ったなしです。
だからこそ、まずは落ち着いて、私たち患者が今できることを考えてみましょう。
治療を続けることは命を守るために大切ですが、生活が成り立たなければ元も子もありません。
主治医や病院の相談支援室、FPなどの専門家と相談し、治療と家計を両立するための
現実的なプランを立てましょう。
ひとりで悩まず、頼れる人を巻き込むことが第一歩です。
患者本人と家族の意見が食い違うことは珍しくありません。
「家族に迷惑をかけたくない」と思う気持ちは分かりますが、
気持ちを抑え込むとモヤモヤが残ります。
話し合いが難しいときは、病院の相談支援員や第三者の力を借りてみましょう。
冷静に選択肢を探ることで、お互いにとって最善の道が見えてくることがあります。
理不尽なことには、声をあげる権利があります。
SNSでの発信がきっかけで国会で議論され、緊急対策につながった事例もあります。
小さな声でも、多くの人の共感を集めれば大きな力になります。
これからの時代、自分で自分を守る力がますます求められます。
同時に、頼れる場所や人を見つけることもとても大切です。
無理をせず、できることから少しずつ始めていきませんか?
わたしも微力ながら、一緒にお手伝いいたします。
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知識を得ることは、人生を豊かにします。
皆さまのお役にたちましたら幸いです。
がんと向き合うFP 辻本由香
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著作権はつじもとFP事務所に帰属します ●執筆者:辻本由香
「がんを生きぬくお金と仕事の相談室」を河出書房新書から出版しました。
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制度面だけでなく、いろんな角度からお伝え出来ることはないか模索してできた本です。
ゲノム医療や妊孕性、気持ちの保ち方などにも触れ、
「よくあるノウハウ本ではなく、血の通った本」との声をいただいています。